日々のこと/2003.6


始まりのつづき

4月に始まった田中ご夫妻の庭生活。
草むしりを終え、日が沈み辺りが薄暗くなっても庭に立つご主人を、
「ご飯よぉー」と呼ぶ美人妻・・・。
毎日がシアワセで溶けちゃいそうなシーン・・・だった。
・・・・雑草の勢いに負けるまでは。
季節がぬるくなるにつれ、居心地良さそうに思う存分伸びまくる雑草は、
取っても取っても次から次へと命を繋げ、
とうとうクワで地面を掘り始めたものの、少しも楽しくなかった。

かくして100uほどの地面を快適な空間にするためのプロジェクトXYZがスタートした。

芝生の世話を楽しみながら、鋏を持って動きたいご主人様と、
アレルギーのため草木や土にはあまり触れることなく、景観を楽しみたい奥様。
お二人の快適空間プランは、
テラスと芝生と奥様ご提案の枯山水の三つ巴、となった。

フリーハンドのお絵描き図面に向かい、CADが欲しいなぁと、涙ぐむ。
しかし涙を拭い、親方がイメージした石の並びと流れの動きと、
無駄のないテラスと芝生の配分を、お絵描きにする。

庭に面した3部屋の窓は全てが掃き出しで、出入り可能で、
その内の2部屋には沓脱石が据えてあるが、撤去し一つは再利用、
3部屋に面した幅10mの部分は、奥行き4mの広々としたインターロッキングのテラスに。
ほぼ高低差なく芝生へとつなげ、直線の園路でアクセントを付け、
道路側の一角に、既存の伊豆石(ボク石)と高低差を生かした枯山水を造る。
前回の工事で姿を現し、助演賞候補となった石が主役に抜擢され、
新たな脇役の玉石と六方石で流れと州浜を造る。
必要な花木は移植し、そうでないものは思い切って処分することにより、
整然とした広いスペースに、居間からテラス、芝生を通して枯山水への視界を確保する。
再利用の沓脱石を庭園燈の置き場として枯山水の手前に移動。
庭園燈は、奥様が「南大室窯」の先生の作品をお選びになった。
焼き締めの素朴な味わいがとても素敵で、嬉しくなってしまう。
資材に多少の変更があったものの、これらのプランで施工となった。

重機を使用する作業から始まり、沓脱ぎ石の処理や掘削、抜根処理の後、
レベルで何度も水平を確認し、砕石、砂の転圧等、慎重に地盤を造る。
インターロッキング貼り、芝張り、と、順調にしかし少々ノロマに進む。
2000個以上のインターロッキングを1つずつ水平に置きゴムハンマーで据える。
芝はベタ張りとし、地盤をレーキで修正し、板で均しながら並べ、
タタキ板でパンパンたたいて密着させる。

枯山水は親方が黙々と石を据える。
時折石の上に置物のカエルのようにしゃがみこみ、ヒゲをピクピクさせて考えていた。
石組みが終わり白砂利を入れる段階となり、漸く参加させてもらう。
周辺の草木を植えていると、早速ヒメシャラの花が次々と落ちて白砂利の上を覆い、
新しい空間に歓迎の拍手をしているようだ。
秋にはギボシやアジサイが小さく枯れて、モミジの赤が落ちるのだろうな。

ダンプで青森砂を運びいれ、いよいよ終盤。
芝が隠れるほどの砂の量に、驚くご夫妻。
インターロッキングの上にも砂を盛り、トンボで広げて箒で掃く。
陽にさらされてサラサラに乾く砂が、砂時計のように石の隙間に落ちていく。

居間からテラスに降り、ベンチに腰掛けて庭を眺める日々が始まるのだ。
芝の世話がご苦労だと思うが、
庭園燈の配線だってやってしまったご主人は、きっと楽しみながら励むことだろう。
始まりのつづきはずっとずっと続くのだな。

物件として見た頃の様子 スタートした頃の庭(姫ちゃんと琴ちゃん)
↓施工前 ↓施工後

↓工事中の様子
↓庭園燈(南大室窯) ギボシ、ハイビャクシン等 ↓宿根を中心に ↓園路から枯山水へ