修行日記


9/26//猫

昨夜のお月さまは、とても綺麗だった。
洗濯物を干しながら、しばし見とれていた。
あまりに明るく大きかったので、祈る事すら忘れていた。

そして今月も信じられないスピードで終わっていくのだ。
毎日とてもたくさんの事を思っているのに、一日の終わりにキーボードを叩く余裕もないままだ。
思う事を残したいのに、次々風に飛ばされて消えてしまう。

昨日、伊豆高原の別荘で門扉のすぐ前の側溝に、白い猫が死んでいた。
U字溝にスッポリはまって、寝ているみたいだった。
誰かが運び、そこに置いたに違いない不自然さ。
まだ腐敗もなく、多分一日くらい経過しただけと思われた。
両手を可愛くニャーの形にしていた。
「どうしようか・・・」と3人で途方にくれた。
気がついたのが夕方で帰る時だったけど、まだ何回か作業に来る予定なので、
今日、何とか始末をしない事には次回が悲惨な状況になってしまう。
結局、ゴミ袋を二重にして、口を開いて一人が持ち、
一人が猫にビニールをかぶせて抱えてゴミ袋に入れ、ダンプに乗せる。
と、決まった。
ゴミ袋を持つ係は親方。
猫を抱える係はトミ。
と、決まった。
私はお経を唱える。
「がしゃくしょじょうしょあくごーかいゆーむしとんじんじ〜〜」
無事にダンプの荷台へ乗せ、3人で手を合わした。

そして、男共は資材置き場へ向かい、私は一足先に家に帰った。
後から聞いたら、セナのお墓の近くに穴を掘り、埋めてあげたそうだ。
「親方はそのままゴミで捨てそうな感じだったから・・」と、トミ。
前にもどこかで死んでいた鳥を埋めた事がある。
ミョーに虫や動物に優しい。
「手に感触が残ってて、やだなぁ・・」とぽつり。

そして、今日は、
稲を刈り取られた田んぼに「お疲れ様でしたぁ」と、
田んぼの脇の見事なコスモスの乱れ咲きに「お見事ぉ」と、
それぞれの秋色の景色に声をかけながら、中伊豆の現場へ行った。
信号が一つもない道を、30分ほど走る。

誰もいない別荘の庭で、最後の百日紅が頑張り、緑色のカキの実がたわわにぶら下がり、、
はじける準備中のマユミの横で、ガマズミの赤い実が空に向かって綺麗に並んでいた。
ああ、右も左も夏が終わっている。
昼休みには着替えをせずに済んだ。
お腹が一杯になったら、車の中でクウクウと眠ってしまった。
ずっと、この仕事が続けられれば、それだけでいいよ。と、思う日。
こんな日があるから嬉しいよって、お月さまに言ってみよう。


8/24//8月のあれこれ

さほど裕福な家庭環境で育ったわけではないが、
私は小学校高学年から23歳で嫁ぐまで、裏千家の茶道を習っていた。
中学校時代はソフトボール部で真っ黒に日焼けした姿で、
高校時代はロングスカートのツッパリ制服姿で、
毎週の稽古に通った。

「植木屋さんと結婚します」
と、先生に報告した時、
「良い仕事ですよ。お茶のお稽古をしていた事がきっと役に立ちますよ」
と、言っていただいた。

でも、役に立っているという実感は、まだ一度もない。

先生はその後亡くなられ、私と同年代位の娘さんは茶道に関わらず、後を継ぐ人はいないと、誰かから聞いた。
車での通りすがり、屋敷を囲む竹垣が朽ち、庭木が空へ空へと伸びていくのを何度か見た。

そして去年、たまたま近くの現場で手入れ仕事をしていた時、
「うちもやってもらえませんか?」と、声をかけてきたのが、亡き先生の娘さんだった。
挨拶代りのお世辞にか、仕事ぶりと手入れの仕方が気に入ったのだ、と言ってくれた。
その時は黙っていたが、後に正式に仕事に入った時、
昔、ここでお茶のお稽古をさせていただいてました、と、
迷った末に言ってみた。
驚いたような、嬉しいような、困ったような、複雑な感情が伝わってきた。

お盆明けに、二度目の手入れに入った。
今回はなんとなく、先生の話題も茶道の話題も出さないようにした。

人との繋がりは不思議だ。
狭い地域の片隅の出来事だから、確率的には十分有り得る事であっても、
不思議だなあ、と、無理やりにでも思い、そんな世界に浸りたい。

そんなこんなで、お盆の前も後も、手入れの現場が毎日続き、猛暑の8月が過ぎていく。





一人暮らしのお婆さんが認知症で施設に入り、
花を愛でる人もなく、寂しく静かになった庭は、
いつものように大事な花をよけて草刈をし、
いつものように気になる枝を切り落とし、
いつものように手入れをし、スッキリした庭になった。

留守を守ろうとしたのか、換気扇の排気口にスズメバチが巣を作っていた。



市内I邸の「海を見下ろす庭」は、3年目を迎えた。
広い芝生は、小まめに施主様が芝刈りをし、合間に私共で斜面などを刈り、元気に青々と育った。
ご主人が、「芝刈り作業は大変だけど、終わって眺めながら飲むビールは最高に美味い」と言っていた。
今回、花壇スペースのサークルにココスヤシを植えた。
小振りなものを植えても見栄えがしない広さなので、先輩のカナリーヤシとのバランスを考え、選んだ。

(こんな感じっすか?) (じゃあ、こんな感じっすか?) (カナリー先輩、ヨロシク!)


そして、何年も放置されていた庭では、チャドクガにやられてしまった。
空が見えないほどに木々が生い茂り、伐採に近い手入れだった。
気がつかずに、脱け殻が舞い散った枝ゴミをワシワシとまとめ、柔道の技のように縄でまるけていたら、
太腿と腕の内側、脇腹が凄い事になってしまった。
汗で濡れた服の内側がキョーレツな痒さで、失神しそう。・・とは、オーバーだけど、、、
素肌だったら、と思うとゾッとする。

とりあえず、ハチ刺されの時の飲み薬で大分楽になった。
ネットで薬の効能も調べられるから、便利な時代だな。

ハチもケムシも猛暑もうんざりだけど、過ぎてしまえば何の事はないね。
そう言えば、気の進まない現場の前に、
「やってしまえば終わるよ」と親方が言う。
「そうだね」と気が楽になる。

もうすぐ8月も終わるのだ。


7/30//ドラマティックレイン

消防団のポンプ操法県大会に向けて、トミは早朝練習が始まっており、ヘロヘロな毎日だ。
でも1人欠けても困ってしまうのが当社の欠点だと、ガッテン承知の助で、
ヘム鉄や亜鉛のサプリ、キューピーコーワ、グッスミンなどの力を借りつつ、
なんとかヘロヘロ現場をこなす毎日だ。
お盆前の手入れと草刈りが、カウントダウン。
全部はきっと、終わらないのだ。
土下座するか、トボけるか、、、、

今日は早朝に雷雨があったものの、7時頃には静かになったので現場へ出かけた。
カッパを着ながら小降りの中サクサクと進めていたら、10時を過ぎた頃、突然、大雨&雷。
暫く軒下で様子を見ていたものの、景色も消えるような降り方になり、
大室の分譲地の道路はみるみる川のようになってきたので、ズブ濡れのまま車に乗り込み退散した。
雷の閃光が、あのマークと同じ形にハッキリ見えて綺麗だった。
でも、側溝から溢れて渦を巻く水は怪物のように怖かった。
家に帰り、昼を済ませたらまた小降りになったので、重い体のまま再び現場へ行った。
まだ水がしたたるカッパを着こみ、
広い敷地の刈り取ったカヤと刈り込んだツツジの枝など、クマデとフォークでエッサカホイホイ片づけていたら、
なんとまたまた雷が鳴り、大粒の雨になってしまった。
あと少しで終わるので、今度は逃げ出さずに頑張った。
最後の仕上げのブロアーは濡れた地面に威力を発揮する。
ふあー、なんとか一日無駄にせず、終わったあ〜
と、安堵×3人。

またまた雷見物しながらの帰り道、一碧湖あたりで脳裏に流れたのは、
稲垣潤一の「ドラマティックレイン」だった。
昔、ちょっと好きだったの・・


7/21//カッパ

朝、私の手は、10本の指が太くむくみ上手く動かない。
弁当作りでウォーミングアップするものの、フライパンや鍋を持つ手に力が入らない。
よく卵を落として割ってしまう。
時々、バネ指のように引っかかる事もあるが、今のところ一時的だからあまり気にしない。
一日中、いろんな道具を使うのも、集めたゴミをワッシと掴むのも、ぜーんぶこの手が動いてくれてんだなー。
と、掌をしげしげ眺めて硬さやトゲの跡を確認した。

数か月前「今年はカラ梅雨、猛暑」の予報を聞いて、「うおーーっし」と気合を入れたのに、
今月は雨が多く、しかも涼しい日が続いている。
それでも予定はぎっしり入ってしまい、少しの雨ならカッパを着ての現場が続く。
カッパの中のTシャツはすぐにグッショリになり、雨が浸みたのか汗なのか分からない。
フードで視界は悪く、耳の聞こえも悪く、カポカポしたゴム足袋は歩きにくく、
何より濡れながら動くのはとても重たい。

水を含んだ剪定ゴミや草を運ぶ段階になると、泥と混じり、
みるみるうちに干潟で跳ねるムツゴロウみたいになっていく。
ふあー、晴れて暑いより、マシかなぁー。
と、思っていると、
周りで草刈り機や刈り込み機、ブロアー等のエンジン音が聞こえる。
夏休み前の別荘地は、植木屋が忙しいのだ。

ダンプ一杯のゴミを積み終えて、漸く一日が終わると、一刻も早く家に帰り、乾いた服に着替えたい。
帰り道、荷台に同じように枝や草を摘んだ植木屋のダンプとすれ違う。

皆、同じだなあ、と、ただそれだけの事なのに、少しホッとしたりする。

でも、女の人は、あまり、いないだろうな・・と思うと、寂しい気もするのだ。

帰宅後、着替えての第一声。
「乾いたパンツは幸せだー!」

明日からは少し夏らしい天気になりそうだ。
そろそろ梅も干したいな。






今年は紫陽花がいつまでも綺麗ですが、例年通りこの時期に刈り込みをしました。
持ち帰った最後の紫陽花。
枯れかかった花の陰の小さな一輪。
うっとりするほどの色と形に癒されました。
傷んだ花びらの穴さえも愛おしい姿です。





7/2//もらっちゃったパート2、そしてハチ

日曜日の午後、疲労で気が抜け、しょぼくれていたら親友からメールが入った。
”今から行っても良いかい?”
もちろんOKメールを返信。
すぐにピンポーンとやってきた彼女は、何やら大事そうに抱えていた。
そして、プチプチの梱包ビニールから出てきたものはきたものは、ジャジャーーン♪
バラの模様のステンドグラスのラ♪ン♪プ!!

彼女と私は、性格も生活スタイルも環境も全然違う。
でも、長い付き合いで、何でも言い合えるし、同じ場面で喜怒哀楽を共有してきた。
いつも、私のゴツゴツをやわらかくほぐしてくれて、彼女のフニャフニャを私はシャキーンとさせているような気がする。

彼女は数年前からステンドグラスを習い始めて、最近は腕をあげてきていたから、ちょっぴり期待していたのだが、
ふふふ、もらっちゃった!
花びらの微妙なピンクと赤、葉っぱのグリーンの濃淡、そしてデザインもすごく綺麗でうっとり・・・
じぃーんと、熱くなって、癒されました。
ありがとう・・



そして、今日は、ハチに刺されちゃった。
左目の下あたり。
グミの植え込みを刈りこんだ後、引っかかった枝をワシワシ取っていた時のこと。
枝が刺さったのかと思ったら、目の前に怒ったアシナガが空中で静止していた。
目と目が合い、刺されたんだと分かって、シャドウボクシングのように踊ってしまった。
ヘンテコな声を上げたので、親方が「なんだ?」と近寄ってきた。
ビエーーンと泣かないまでも、イテーよーと訴える。
顔が命・・だし、困ったな。
と思っているうちにみるみる歯や目や頭も痛くなったので、病院へ行かせてもらった。
車のミラーで見たら、目の下が腫れて紫色になっていた。
色白だったら、赤くなるのだろーな。
一旦家に帰り、汗でピタピタのシャツを着替えて近くの病院へ行った。
(現場スタイルのままだったら、汚くて臭くて迷惑だしね。)
注射をしてもらい、飲み薬と軟膏をもらい、ロスタイム1時間で現場へ戻れた。
そして、まもなく、紫色がいつもの濃い目のオークルに戻り、腫れも少し引いた。
何の注射だったのかな・・

そう言えば、刺された箇所は二男の骨折と同じ左目の下だ。
不思議だな。
(彼は先月、全身麻酔で手術をして10日ほど入院したが、無事に回復。)

そして、夕方、今度は右目の下をブヨに刺された。
この前、火傷をした鼻の頭を中心に、3点セットになった。

小さな不運が続くのは、大きなハッピーの前兆か・・
ナムナム・・




6/30//もらっちゃった

呆れたのは、牛肉偽装事件だっ。
そう言えば、メーカー名は忘れたけど、何年か前、冷凍コロッケを食べた時、プチリと噛み切れないツブを感じて指で摘まみ出した事がある。
「皮」のような感触だった。
「肉」じゃないと直感したのを思い出す。
すべて「金」のためかと思うと、悲しい。
そして、母子殺害事件だっ。
本村さんの必死さに心が痛む。
「妻の無念を晴らすには私が頑張るしかない」という言葉に歯を食いしばった強さを感じる。
どちらも、憎むべき人の生い立ちや宿命を思うと、更に悲しい。
でもどんなに裕福で苦労ない人生を送っていても、英会話講師殺害事件のような事もあり、
結局、置かれた立場や境遇に関係なく、何が人を違う道に追いやってしまうのか、不思議だ。

「アンタ、違うよ」と言ってくれる相手が傍にいるかどうか、そのあたりかなぁ・・

有難い事に私の周辺には、老若男女揃っている。

この前、「おかあ、こんなの使う?」と、三男坊が差し出したもの。
「何これ?」
「ウォークマンだよ。いらないからあげる」

へぇーーっ!!

カセットからCDになり、MDになり、今はコレかあ〜!!

もらっちゃった♪

充電はパソのUSB端子に入れて3分。
聴きたい曲はネットからも購入できるし、パソのデータからも転送できる。
うっ、うれしい!
早速、SonicStageをダウンロードしてインストした。
これで何かしながら絢香のWindingRoadもL’Arc−en−CielのHONEYも聴ける!

時代の流れに乗るために、自分で情報を集めるには限界があるから、
いつも新しいモノに触れている若者が近くに居ることは、楽ちんだ。
最近の核家族化で、老夫婦だけで暮らしているケースが多いと思う。
たいてい、情報量が少なく、知らない事が多すぎる。
悪徳商法に騙されたり、新しい家電を使いこなせなかったり、地デジの知識すらなかったり、、、

「西の空が明るいから、雨は降らないよ」
「iモードでみたら雨雲は南下してんだって、西は関係ないかもね」
「へー、それがマーモードってやつかね」
「人魚かっ!」
「???」

バーバと私の会話。

たとえ一緒に暮らしていても、新しい情報を知りたいと思う気持ちがなくちゃね。

ま、無理してついて行かなくてもなんとかなりますが・・・
「温故知新」ということで、お後が宜しいようで・・・