10月?日/大文字草
青く柔らかだった木の実が次々と自分の色をつけ、
シックに変身した葉っぱと共に、秋を飾る。
労働するのには有り難い気候で、作業もはかどる。
イップクひと休みの時間も無言のまま深呼吸とノビ゙をするだけで充分だ。
山の中の別荘地は隣地が雑木林のままであったり、草むらだったりする。
パキパキと枯れ木をかき分けて少し入れば、
アケビやフジのツルを取ったり、木の実を拾ったり、シュンランを探したり、
楽しい事がたくさんあるのだ。
いつのまにか倉庫の中は、
カゴになる前のツルや新聞紙の上に並べた木の実でいっぱいだ。
すべて、冬の楽しみの材料。
なんだか、獲物をせっせと巣に運ぶ動物みたい。
夕飯に、トミが掘った山イモをすり、一品増えた。
ずっと、ずっと、こんな時間が続けばいいなぁ、と願った。
その外側の世界では、
空襲におびえる人々と病気の牛と優勝をかけるイチローがいて、
その外側では無抵抗の大きな自然が泣きも笑いもせず見ている。
大文字草が咲いた。
ユキノシタの仲間で、
下向きの花びらが2枚だけ大きく、「大」の字に似ている。
(人字草(じんじそう)との区別がよくわからない。)
ずっとしゃがんで見ていても飽きない。
可憐な花をつける野草は荒れた心を癒してれる。
ヒトのために咲こうとしているわけじゃなく、
ただ、咲くだけ。
意味がないから、とても、いい。