今で言う「サンプルガーデン」として、池を中心とした庭を30年程前、つくった。
当時は関心のある人々が各地から見学に来たらしい。
地下水をくみ上げ、滝口から流れる水は同じ水温を保ち、豊富でとても澄んでいた。
錦鯉を育て、コンテストに参加するのが、ジイジの趣味だった。
ジイジの部屋は鯉を模ったトロフィーでいっぱいだった。
普通を0、派手を+10、地味を−10として、ジイジは+7ぐらいだったけど、
それを横目で見て過ごしてきた親方は、−4ほどの爺さんに仕上がりつつある。
だからジイジが亡くなってからは、私たちは鯉たちをストレートにペットとして可愛がった。
消毒の仕方やムシの処理が上手くできずに、死んでいった鯉もいた。
大きな体を地面に置くと、可哀相で見ていられなく、
ブリだったら食欲もわくだろうが、同じ魚類でもとてもそんな気にはなれない。
そんなこんなで、6年が過ぎ、
鯉の数も減り、とうとう地下水をくみ上げるポンプも壊れてしまった。
家の湿気もひどく、悩んだ末、池をやめることになった。
鯉の里親がやっと見つかり、最後の記念に写真を撮った。
今年、池に放った鮎6尾は、2尾が子持ちだった。
そう、つまり、鮎はペットじゃないので美味しくいただいた。
2匹はある旅館へ、残りはあるお寺へ、それぞれ旅立った。
鯉は縄張り争いがないらしいから、新しい住み処でも上手くやっていくだろう。
朝、窓をあけて、パクパク口を開けて集まって来る姿がないのは、ちと、寂しい。
滝口で育て始めたクレソンはあっという間に枯れてしまった。
水の音がない生活は、他の音がよく聞こえすぎて、少し居心地が悪い。
さて、水のなくなった池はただの大きな穴になってしまったが、
残った石を活かすか、手押しのポンプでも据えてみるか、
これからじっくり考えて第二のサンプルガーデンにしていこう。
こうして、ひとの「してきたこと」は形を変えながら、変えながら、続いて行くんだなぁ。
綺麗な水でした | 井戸が止まって2日目。水が濁ってきました。 |
鯉すくい開始 | 同じ方向へまわして、目をまわさせ、おとなしくさせます |
目がまわったところ。この鯉はボスのような存在でした | ビニール袋に入れて酸素を入れます。 |
↓水のなくなった池 | |