日々のこと/2002


2月?日/公共工事です

久しぶりに市の発注工事をすることになった。

わが町伊東はいろんな事情で財政難が続き、
県内では初めて、市職員の給与を3%カットすることになったばかり。
今の自営業者にとっては、3%くらい、へのかっぱでも、
公務員の給与の3%カットは、
スッタモンダスットコドッコイ、大変な事らしい。
これまでも、無駄な工事なんてあった筈はないけれど、
厳しい財政で少ない予算の中、工事の発注はぐっと少なくなっている。
そんな状況での受注なので、
有難さが喉のあたりで5〜6回バウンドしてから、
胸の中へじわわんと沁みた。
私は今のところ、残念ながら、自分を主張するデザイナーではなく、
公共工事を嫌う理由もないし、
頂いた図面に忠実な仕事をする事に、誇りすら持っている。(つもり)
ただ単純にがんばるのみ。
うっし、気合。

しかし、着工届から始まる提出書類に少し、モタつく。
新しいPCにして、一太郎からワードに変えたし、
前のデータで救出するのを忘れていたものもあったし、
ま、ともかく最初からやればいいのだと、
気持ちを切り替え、やる気ランランでキーボードを叩いた。
「施工計画書」が一番タイヘン。
でも、でけたっ。提出。
即、訂正の連絡。ショボン、ポリポリ。
そして、即、訂正し、再び提出。テキパキ。

工事はハイキングコースの歩道の整備が主な内容。
また、筋肉か・・・。ムッキン。
幅1M長さ200Mの歩道を掘削し土取りし、
砕石をいれ転圧し、土系舗装材で仕上げる。
商品名「スタボン」(25s)を426袋、使う。
おまけは、道標の設置と、ヤブツバキの植栽。

工事看板を立て、いよいよ着工となった。
社名の入った看板を堂々と立てられる。
これは、宣伝活動もしてくれるから、嬉しい。
早速、道行く人が「ほおー、始まるのか」と、看板を眺めていく。

ひととおり、着手前の写真を撮る。
今回は範囲が広いので各所撮り終わると、
海岸を回っての気持ちの良いハイキングコースを1.2km歩く。

ミニユンボの力も借りたけど、
スコップ、鋤簾、1輪車、筋肉のセットが大活躍。
冬型の空に戻って、小雪もちらつく中、
汗を流して体脂肪を減らす。
合間に写真も撮る。
水平器を当て水糸をはり、マークをつける。
管理も施工も同じ顔ぶれだから、
情報伝達にズレがある筈がないのだ。便利。
一週間で転圧まで終わり、不陸整正工が完了した。

来週からいよいよ、舗装開始。
つづく・・。

土を掘ると、必ず鳥がやってくる。
今回は、おしゃれなブルーの「イソヒヨドリ」が毎日来た。
手摺の上にチョコンと乗っているけど、
写真嫌いらしく、どうしてもアップで撮らせてくれなかった。
プレートでガンガン始めた頃には、もう現われなくなった。
来なくなると、寂しいんだな、なぜか。


2月?日/舗装工開始です

いよいよ舗装工開始。
この舗装材、雨に濡れると使えなくなるので、
出番ギリギリに荷が着くように発注する。
現場にはスペースがないので、ひとまず秘密基地に搬入。
1パレットが50袋、1.25tの重さだ。
合計約8パレットが到着した。
フォークリフトをヤフーオークションで買っておくべきだった。うっそ。
あれば作業は滑らかだったろうが、ユンボの力で吊り、並べる。
パレットの板がベリベリ割れる音が響く。
ここで役所の監督員による「材料検収」が入る。

この舗装材、真砂土に透水剤、固化剤を混ぜたもので、
各メーカーから様々な製品が出ているらしいが、
ここでは、「スタボン」という製品を使用。
名前が「バカボン」に似ている。
でも、フランス語だとさ。(「ガンコ」という意味だって)
どのメーカーのものも成分や施工方法、価格には大差ないと思う。

施工箇所を整地後、乾いた状態で敷き均し、散水して固める。
施工が簡単、というのもウリのひとつ。
だけど、25キロのモノを運ぶのだぞ・・・。
そして、きな粉のように粒子が細かいため、
均した後、落ち葉がカラカラ転がっても模様になってしまう。
膝をついて、後ろに下がりながら均していくのだけど、
自分がきな粉餅になった気分。
そして、散水、散水、散水、散水。ひたすら散水。
初期散水、二次、三次、と、何度もかける。
1u当たり、18リットルかけるのが基準。
ここは、川沿いの道なので、
川からポンプでくみ上げた水をタンクに貯め、動力でホースを使う。
乾いて固まるまで一週間ほど養生する。

施工2日目、80M進み、
バリケードで「絶対に入るなよ」と囲み、現場をあとにした。
次の日の朝、気合の入った足取りで現場に入ると、
なななななーんと、人とイヌの足跡が80Mきっちり、ついていたのだ!
途中何箇所かイヌが踊ったらしい。ぐるぐると。
わしゃ、気絶して川に落ちそうになった。
26cmの男物の革靴、イヌは中型、と、見た。
修復に半日のロスタイム。
ま、いいかっ。

犯人は現場に現われる、と以前、安浦刑事は言ったが、次の日の朝、
バリケードをはずしていたら、怪しげな人物が来た。
履いている靴と連れているイヌを見て、ホシに違いない、と思った。
「ふーん、工事中なの、入れないの」と話しかけてきた。
「スミマセンね、ご迷惑おかけして・・。でも、絶対に入らないでください」
と、頭をぴょこんと下げると、
「ああ、ぜったいに通った
ことなんてないよ」と、言った。
うっそつきっ。ま、いいかっ。

その後は猫の足跡が数箇所ついただけで、順調な養生の時が過ぎ、
木ゴテのすべりも慣れ、散水の要領も良くなり、
作業は、かなりなハイペースで進んだ。
20M毎に砕石部分から仕上がり面までの高さを、
水糸を張り、スタッフを当て、計測し、写真に撮る。
高さ、幅、長さの出来形管理。
終点間近に15袋ほど足りなくなり、追加注文。
空き袋はすべて、最後に写真を撮るので数えて取っておく。

「いつ乾くの?早く自転車で通りてぇなぁ」と、チビッコ。
「これなら石につまづく事もないわ」と、おばあさん。
「歩いてみたかったなぁ」と、東京から来た学生さん。
「今度は街灯も付けたくなるね」
「綺麗になったなぁ」
などなど、道行く人が声を掛けていく。
土色のパフパフ状態の作業着のまま、ニンマリ、嬉しい。

もうすぐ、歩けますからねぇーっ。

↑1パレット毎、下ろす。 ↑スタボンの山。
↑木ゴテで均す。木漏れ日で見にくい。 ↑いったい、だれが。ショック!