日々のこと/三月


3月?日/完了検査

歩道の舗装がすべて終わり、
ヤブツバキの植栽を4ケ所、道標の設置を2ケ所、
古い道を石でふさいでしまう作業、などを終えて、
完了届とともに工事写真を提出し、
いよいよ完了検査にたどりついた。

この季節のせいか、
学年末試験に良く似た緊張感で、朝を迎える。
予定時間より2時間ほど早めに現場へ行き、
ブロワーで落ち葉掃除をし、マークの確認をし、
ぐるっと一周、点検をする。
厚さ確認のコアが一箇所上手くとれなくて、
暫く皆で腕組して考えたが、諦める。
この景色とも、しばらくはお別れか・・と、
切なくなってしまう。
まだ時間があるので、
いつもの眺めをもう一度見ておきたくて、少し歩く。

今日の海は、深い碧色で、ズンズンとした静かな音。
間違えてあと一歩前に進んだら、死ぬのだな、
痛くて、苦しくて、その後、静かに楽になるのだな、
間違えないように、気をつけよう。
少し後ずさりして、時計を見た。
まだ、時間はありそうだ。
まだ、ひと気のないつり橋をわたる。
ちょうど真ん中あたりで、下を見ると、
痛そうな岩が笑っていて目があった。
しばらく見詰め合っていた。

スキップでつり橋を戻った。

ユーカリの皮が敷物になった林を歩き、
忙しそうな鳥やリスに声をかけ、
大好きな小道を歩いて元に戻ってきた。
「どこ行ってたんだよ」と、親方が黒板を抱えていた。
「あの世のちかくまで」と、言おうとしたけど、やめた。

ヘルメットを被り、
黒板に「竣工検査」とチョークで書く。
丸い顔に似合わないからヘルメットは嫌い。
間もなく、担当の職員と、検査官が来て、
検査が始まった。
「おっ、女か」という顔で、チラとこちらを見た。

ポイント毎に長さを計り、確認。
出来形管理表の数字と比べる。
崩れたコアは、大目に見てもらえた。
開いた穴の深さで何とか計測する。
次々と確認が進み、ツバキの規格と数量確認。
木の向きやシュロ縄の縛り方や、
職人的にこだわった部分は何一つ検査の対象にはならない。
道標の基礎コンクリートの計測、位置の確認。
すべて終了すると、成績発表というか、その場での寸評を頂く。
親方の後ろに隠れるように立ち、気をつけ!の姿勢で聞く。

ふぅーっ、終わったぁ。
伊東市のマークをつけた車が見えなくなると、
ヘルメットをとり、髪をわしゃわしゃと直した。

コアの後の穴埋めをして、道具を片付け、
三人でしゃがんでミーテイング。
工事中の時のようなトゲは皆、抜けて、
ホワホワした優しい会話になっていた。

完成! 今日の海 大好きな小道