修行日記*日々のこと*2002


5月/アカマツの姿

昔は、大事に大事に手入れされてきたアカマツが、
突然、知らん振りされてから、十数年、
ひたすら枝を先へ先へと伸ばしてしまい、
風も光も通らない、可愛そうな姿になっていましたとさ。

・・・・ともかく何とかするのだ。

枯れて硬くなった枝を切る鋏と鋸の音が、
いつもの松の手入れとは違う雰囲気を作る。
細い枝は手で払っただけでパキパキと落ちる。

鳥の巣のような古っ葉のかたまりが、枝の又にあちこちに見える。
古っ葉を落としながら、皮手袋で幹を擦ると、綺麗なアカマツ特有の色が出る。

枯れ枝が切られると、
今度はぶつかり合って絡み合った邪魔な枝を落として行く。
私は「その他」の木を手入れしながら、
時々下から見上げて、親方がどの枝を残すのか、予想する。
的中すると、「ほーらね」と、自己満足のガッツポーズ。

少しずつ幹と枝の綺麗な線が、出来上がってくる。
棲家にしていた枝を落とされ、行き場のなくなったケムシがぽたぽた落ちてくる。
少しずつ地面に昼間の明るさが射す。
カーポートの苔も乾くだろう。

一日かけて形ができた。
親方は、枝先が上を向いていて落ち着かず、まだまだ不満足気だが、
道行く人たちがそれぞれの感嘆符で見上げて行く。

植木屋さんらしい仕事って、こんなんかな〜。