世の中の不合理なルールや、
魂の繋がっていない形だけの人間関係、
日々の糧だけが目的の小刻みな動き、
それらに抵抗する知恵も力もないまま、
今年の三分の一が終わってしまったな。
速いな。
生きてきた日数が分母になるのだから、
一日の長さはみるみる短いものになっていくんだな。
短いのに、とても濃いな。
どろどろと捨てきれないままの荷物の上に、また積み上げるのだから、
仕方ないな。
さあ、仕事、仕事・・・。
切り倒したヒノキを4トンダンプにきっちり積み、
ワイヤーロープできつく締め上げて、運んだ。
今回は4mの長さに切ったからどこかで引き取ってもらえるかもしれない。
新築の家の柱に利用されれば、ヒノキ冥利に尽きるだろうな。
9個の根っこは想像したよりも深くて大きかった。
ユンボでまわりから崩して行き、穴に潜ってチェーンソーで根を切る。
また掘り進み、張っている根を切断する。
漸く掘りあげた根っこは、タコのように足をくねらせ、不安定に地面に座る。
途中から私は別の現場で除草作業に明け暮れた。
様子を聞けば、ドでかい根っこをダンプに収めるのに大変だったらしい。
伐採のスリリングな作業から一転、
根気が勝負の除草作業は、筋肉がほっとした気分だ。
すぐ近くで小鳥たちが声量も音程も表現力も満点で歌う。
草の根を切るカマの音がリズムを作る。
ずっとこんな時間が続けばいいのに。
仕事が早く片付いた日は山の上の秘密の場所を一回りする。
あちこちから運んだ、みなしごの木たちが何の意味もない順番で植えてある。
それらの木々の一番奥の日陰になった一角に大事なエビネがあるのだ。
一面に咲いてる、咲いてる。
チカチカと薄いピンクに咲いている。
誰も見に来てくれないのに、一生懸命子供を増やしている。
家の庭に移そうか、と毎年迷って、やめる。
ここが似合うような気がする。
ここが好きに違いない、と勝手に頷く。
「君は引越したい?」とギボウシに尋ねたら「うん」と言うので、
ヤマモモに立てかけてあったケンスコで掘りあげ、オレンジ色の箕に乗せた。
鳥たちは自由に飛び、楽しげに歌うのに、君たちは自分で動く事もできないね。
灯篭の際にギボウシを植えた。
ウメの木の下でユキノシタが花芽をつんつん出してきた。
冬の間、優しい日差しが射したそこは、
もうすっかり、ウメの葉っぱで日陰が作られている。
ずっとこんな時間が続くといいな。