富戸S邸//作為的無作為な景色


        


路地に並ぶ地元住民の家々に囲まれた、海の近くの住宅地。
別荘地ではないせいか、潮風を感じる静かな環境です。
以前醤油屋を営んでいた古民家をリフォームした、レトロな雰囲気の別荘です。
アルミサッシもシステムキッチンも使われていません。
それらに感激していると、風呂場に特注で設えた常滑焼の浴槽にノックアウトされました。

庭は雑草に覆われた、まだ手つかずの状態で、造園工事のご依頼をいただきました。
当初、私の行きたかった方向を抑え直線的で無難なプランをプレゼンしたものの、
お施主様(非常にお若いご夫婦)も同じ方向を向いている事を知り、自然でランダムな線と点を描きながら進めました。

歴史を感じる既存の石積みが雑草で隠れていたので、これは是非、主張させたいと思いました。
重機もなかった時代に造られた形は、愛おしく、力強く、好きなのです。
手がける空間に自分の「好き」が入ると、やる気が増します。
その石積みに使われていたものと同じ四角い石が敷地に隠れていたので、
お施主様のご希望に沿いながら、芝生にてんてんと据えました。


植木、草花、石など、素材が造る「作為的無作為な景色」は、目指すところの、極めたい景色です。
少しでも近づけたら良いと思うのですが、難しいのです。


施工前 完成
建物と庭の間の石積みを活かしました。
石積みの下にはムラサキシキブとハクチョウゲを植えました。
石積みから庭への繋がりです。同じ石をランダムに配置しました。深く埋け込んであります。
反対側からの眺めです。ビワの木を2本伐採し、自然樹形のものを植えました。
手前からヤマモミジ、コナラ、ヒメシャラ株立ち、ヤマボウシ株立ちです。
石積み上のスペースはアジサイ、サザンカなどを伐採し芝生を張り、広縁からの眺めを確保しました。
風呂場目隠しにトキワマンサク白花を選びました。右側は既存のネーブルの幹です。
風呂場前デッキの両側に御簾垣を造りました。
雨落ちの部分は瓦で仕切り黒玉石を敷きました。石の下地は防草シートを張ってあります

 
落葉樹の株元に、現地にあった石を配しました。
元はお醤油を造っていた家だそうです。たぶん製造工程で使われていた石だろうと思います。
「主」ではないのに存在感がある7つの石をそれぞれが見つめ合うように置きました。


風呂場前にはシモツケ、ヤマブキ、ユキヤナギを。
良い感じのモサモサ状です。
石に寄り添うようにギボウシを。
他はミヤコワスレ、コグマ笹、オダマキなど
広縁前の芝生と雨落ちの砂利敷きも、
瓦のエッジ(仕切り)を深く入れました。
風呂場の常滑焼の浴槽と、御簾垣の色が、
初めまして・・・・宜しく・・・と挨拶しました。

ヤマボウシ ヒメシャラ シモツケ カラー ムラサキシキブ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それぞれ盛りが過ぎてしまいましたが、最後の力で咲いていました。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・作業中の様子です。抜根、掘削など、地面との勝負です。今回、重機を入れなかったので人力のみ・・・・・・・・・・