どこかで誰かが
いつにも増して、寒暖の差が激しい冬の終わりだった。 |
ガッコンガッコンとパワーシャベルで土を動かし、地面の形を変えた。 感動のない作業の合間に、冠婚葬祭が続き、 笑い、泣き、感情の移動が忙しかった。 |
ある日、もう随分会っていない中学校時代の友達から、突然電話があって、驚いた。
「どこか植木屋を知らないか?」と、知人から聞かれた彼女は、
(そう言えば、ハルちゃんが植木屋さんにお嫁に行ったっけなぁ)と、
思い出してくれて、是非紹介したいと言うのだった。
その人は某マンションの住人で、今の庭園管理に不満があったらしく、
理事会にかけて業者を変えたいとのことだった。
結局、うちも含めての何社かの見積合わせとなった。
私の事をピーンと思い出して、電話をしてきてくれた、
その彼女の気持ちが嬉しくて、有難くて、
たとえ成約に繋がらなくともシアワセな気分だった。
でも、繋がれば、もっとシアワセで、彼女の気持ちも無駄にならない。
3人チームで現地を回り、数字をはじき、検討し、誠意のある数字を並べた。
管理作業だから、作図はなくても、何かあるはずだ。
再度現地を回り、ひらめいた事を文字で表し、写真をつけて提案書を作った。
感謝の気持ちとタマシイを込めた見積書が仕上がり、
きっちりと封印を押して、送った。
内定決定の連絡を受け、3人チームは歓喜の踊り。
その後、理事会に出席して承認をいただいたものの、
管理会社の系列に大手の同業者がいた事を知り、
ひぇ〜っと肝が冷えてしまった。
でも、やらせていただきます。がんばります。
その「大手」から比べたら「虫」みたいな小さな存在のうちらですが、
「だから」できるのかもしれない、と思ったのであります。
私がここでこうして生きているのを思い出してくれた友に感謝し、
私も、どこかで誰かが一生懸命生きているのをいつもいつも想っていたい。
な〜んて、空を見上げて涙ツンツンしたのであります。
とにもかくにも、
どちら様もお手柔らかに・・・・。