庭の完成
お盆休みの4日間、スカートをはいて過ごした。 |
伊東駅の裏手に海も山も町並みも、ぐるりと見渡す高台の分譲地がある。
景観を確保するように、段々になった二区画を求め、
上の段に建物を、下の段に庭を造る工事があり、縁あって庭の施工の依頼を頂いた。
建物の周囲と、プラスまるまる一区画が庭になるのだ。
小学生の二人のお子様を持つ、お若いご夫婦と、
まだ建築中で足場が取れない現場で、6月の半ばに打ち合わせをした。
ご希望は、既存のカイヅカ生垣の撤去と新しい生垣、芝生、伊豆らしい植栽、家庭菜園、等々・・・。
建物のデザインを壊さないように、控えめでシンプルながらも、ダイナミックに、
そして個性的ながら、見渡す景色に似合った飽きない庭にしようと思った。
2階のリビングから続くテラス、そこから直線の外階段で庭へ降りる時の視界と、
坂道を上がって来て、建物を見た時の視界、
その2つのポイントを中心に、プランを練った。
また、視界やデザインも大事だが、安全性と快適性にも考慮した。
既存の生垣を撤去し、トキワマンサク赤葉の生垣でぐるりと敷地を囲う。
機会があったら是非生垣に植えたかった種類だ。
渋い葉の色が変化して、1年を通して楽しめ、樹形もフンワリしていて綺麗だ。
花も綺麗な色だが、葉の特徴に惹かれる。
階段の上から広い芝生の緑を見渡す時の南側に、3つの円を置く。
3つの円はほぼ真南に向かって正三角形状に並べ、発展的なイメージにした。
私自身は、家相や風水の事は何も知らず、気にもしないが、
南の空には、なぜか、希望を感じる。
未来に向かって溢れ出る力、挑戦するエネルギー、達成する自信・・・。
南に背を向けてはいけないような、気がするのだ。
実は、なんと、奥様は20年程前の陸上アジア大会での、七種競技の金メダリスト!
今は、歯科医師のご主人様とお子様達、ご家族揃ってテニスを楽しまれているが、
きっとテニスコートでもアスリートの血がフツフツと沸いているのだろう。
ご家族皆で、どこまでも挑戦してほしいと願いながら、南を指した円を描く。
(トキワテニスクラブのHPはこちら)
植栽は出来る限り数を抑え、芝生の広さをキープしよう。
柑橘類は少し、植えたい。
カナリーヤシとソテツは、思い切って大きなものがいい。
広い敷地を生かして、似合うものを探そう。
建物の周りは雑草に悩まされないようにしよう。
出来上がった原案を見ていただくと、わずかな変更でOKのお返事を頂いた。
信頼して任せて下さる事が有難く、感謝の気持ちが溢れると同時に、
責任もって良い庭にしようと、いつにも増して気合を入れて工事にかかったのだった。
今回、作業中の写真を撮る間合いもあまりなく、施工に集中した。
集中力が途切れると土と汗で汚れた体に気付いた。
スカートで過ごしたお盆休みをはさんだが、
スイッチはスムーズにオンし、完成に至った。
途中、何度も頷き、思った事は、
素材に触れて、その重さや性質を体で知ってこそ、
素材を生かすデザインをスタートできるのだと、
改めて、感じ、そこから己の自信を育てようという事だ。
そして、地面は、第一段階で出会う素材だ。
ジョレンやレーキや地下足袋の底で、地面の平らと凸凹を感じてこそ、
紙の上に線を引く事が出来るのかもしれない。
私は、そうありたい。
時遊空間・小川様、ウェルホーム・佐藤社長様、奥様、山本様、大変お世話になりました。
ありがとうございました。今後とも宜しくお願いいたします。
前 | 後 | ||
A→ |
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↑子供部屋の前は、土系舗装。防草効果があり、透水性が良く、照り返しがない。 のり面の際にはフェンスの続きに低いキンメツゲを列植し、硬さを抑えた。 家庭菜園は大きく取り、作業のしやすさとデザインを兼ねて中をランダムに区切った。 |
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B → |
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B→ | ←↑ 玄関横のヒメシャラはこんもりした株立ち。 落葉後の樹形も綺麗だろう。 計器の目隠しにソヨゴとシマトネリコを植栽。 裏手は防草シートを張り砂利を敷いた。 ステップの両側にはビヨウヤナギとハクチョウゲ。 ふんわりとした雰囲気に。 手前には小振りのゲッケイジュ。 香りを楽しむ。 |
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C→ | ← 道路側からの様子。 3本のソテツがクネクネダンスをしている。 樹木そのものが素材の段階でデザインされていれば、 位置と向きを樹木に聞く。 これこそが、庭師の仕事だ。 庭への入り口である門扉が目立たないように、 生垣をずらし、トリックした。 |
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D→ | ← 階段両側のノリ面は既存の石積みを撤去し、 左はABロック積みと芝生で、 右は芝生の中にソテツを植栽し、修復。 |
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E→ | ← 下から建物を正面に見る。 スッキリとした空間に建物が映える。 曲線と直線がそれぞれ綺麗に絡む。 |
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→ | |||
F→ | ←↑ ・建物側から下の段を見る。 ・低めのキンメツゲで視界をキープ。 ・海をバックにカナリーヤシが雰囲気を出す。 ・真南に向かって並ぶ3つの円が発展的・・。 |
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← (補足 )周囲の生垣はノリ面の低い位置に造り、 平らな部分を広く確保した。 工事のスタートは、レベルをとり地盤を決める事だったが、 この工程に予想以上の時間を費やした。 その甲斐あって、なだらかな斜面が出来た。 |
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→ | ←(裏手の階段補修) |
おまけ
カナリーヤシは4.5tの重量だった。根は繊維質で切りにくい。ラフターとクレーン車を使って引越し作業も大掛かり。 | ||||
ソヨゴ |
シマトネリコの葉 |
レモンの実 |
ハッサクの実 |
トキワマンサクの葉 |
←協力:上原電気 |