カエルと人
相変わらず、花粉症に悩みながらの現場が続き、
新型のトンガリマスクが頬っぺたの肉に食い込むのが、
ほんの少しだけ気になったりする。
そんな中、新年度に向けて事務的な仕事も多く、
いつもは、2日続くとウズウズイライラしてくる室内の仕事なのに、
空気清浄機の幸せに、ジンジンと浸る日もあり、
フラフラしたり、シャキーンとしたりの繰り返しの春なのだ。
某別荘の流れの補修に取りかかった、ある日のこと。
流れの最後に埋けこんだ、W40cmH50cmの四角い溜めマスに
重なり合ってじっと沈んだままの、5〜6匹の手のひらほどのヒキガエルを見たのだ。
体の周りには、かなりの数の卵が産んであり、グロテスクな光景だった。
流れの水を抜き、溜めマスからポンプをはずしてから数日経っている。
その間降った雨水と残りの水でマスは満タンになっていた。
いつ入ったんだろう。。
「水の中でなんか寝るかなー?」
「突付いてみよーか?」
「やめろよ、今動かれたら仕事ができないよ」
結局、カエルは時々見て見ないフリをしたり、そぉーっと覗いたりしながら、
防水の仕上げをする事にした。
やめておこうと思うのに、ついいついカエルの卵に似ている食べ物を連想した。
運良く、あまり思い当たらなかった。
イクラ丼も似ていなくて、良かった・・!
何日か後、最後の防水が乾いて、水を流してみる事になり、
いよいよ溜めマスの中を綺麗にする時がきた。
棒で突付いてみるとやはり、寝ているのではなく、すでにお亡くなりになっていた。
マスの水が深くて、産卵の後出られなくなったのかもしれない。
卵が生きているかどうか、可哀相かどうか、など、
何も考えない事にしよう、と、無言で3人が頷きあった。
トミ、ありがとう。
網と手ですくい出してくれて、ありがとう。
ぜーんぶゴミ袋に入れてくれて、ありがとう。
ちょいと匂ったね、すまんね。
生き物全てを愛する君には、辛い作業だった・・。
そして、その後、
なんとか流れの水も漏れる事なくスムーズに循環し、
防水樹脂が景観をブチ壊す事に、なぜか何ら苦情もなく、
仕事というのは、こういうものだと、思えば思うほど、
ため息がふーふーはーはー漏れるのだった。
いつも木や石や花、カエルやヘビや虫を相手にしているが、
本当の相手は「人」なのだと、気がつくと、後味を意識してしまう。
いかん、いかん。
ホリエモンの野望のキーワードも、行き着く所は「人」かなあ。
ああ、奥歯に何が挟まってんだろ。
文字にしたくない時もあるのだ。って事かな。
ま、いいか。