修行日記/2005.5.21


海へ続く庭で


伊東から南へ40kmほどの白浜中央海岸。
穏やかな波が岩場に打ち寄せ、青いグラデーションの先に遠く伊豆七島が浮かぶ。
浜を見下ろす国道からの斜面に、まるで秘密の隠れ家のような古い家屋と庭がある。
段々になった庭の先には、浜への入り口がポッカリ開いている。
一歩境界線を踏み出せば、白い砂浜と青い海が広がる。
言葉にできない、贅沢な空間。


(↓)施工前
駐車場と敷地内を繋ぐ、
危険な変形S字の階段。
蹴上げが高く、足腰に負担がかかる。
(↓)施工後
両側に枕木を置き階段の幅を広げ、隅に段差半分の蹴上げ部分を作る。
交互に一段ずつ上り下りし足腰の負担を軽減した。
手摺は素朴な木材を使い、朽ちたら交換できるように設置。
モルタルは墨をいつもより多めに入れた。
素材はタイルやアルミ製品は避け、
出来る限り景観に溶け込むものを使用

支柱の埋けこみはパイプで仕切り、取替え可能。




浜への入り口に枕木で門柱を立て、階段を造る。
この後、建具やさんが木戸を付ける予定。


石積みの途中には平らな据え方を入れて、
少し遊ぶ。
目地モルタルを入れない部分には草花を。

作業中


古い家屋は、窓枠や壁の板にも趣があり、
波の音を聞きながら、タイムスリップしたような錯覚を覚える。
グラビア撮影によく使われるそうで、作業中にも「プレイボーイ」の撮影隊がやって来た。
篠山紀信も来た事があるそうだが、残念ながら今回は違った。
ドヤドヤ8人ほどの男女の中にベンチコートを羽織った若い女の子がいた。
「うわっ、アレを脱いだら裸かなぁ・・・」とひやひやしたが、可愛いキャミワンピを着ていた。
狭い階段ですれ違ったスタッフの女性が、フワッと避けるように仰け反る格好をした。
あ、そーか、ヤッケがセメントだらけだっ。

撮影が終わると、また、静かな時間に戻った。
海の色や波の音、潮の匂いを満喫しながらの仕事なんて、幸せだ。
昼休みにはゴム足袋に履き替えて浜へ下りた。
近くに遊歩道があり、散歩コースが続いている。
シーズン前の平日のせいか、誰もいない。
潮の引いた岩の間をピチャピチャ歩いていると、
そのまま水平線まで行きたくなった。
ああ、人が作り上げる景観なんて、ちっぽけすぎる。
せめても邪魔だけはしてはいけない。
人が作ったもので、台無しにしてはいけない。
そんな時もあるのだ。


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