9月?日/ぴいあある
これまで必要に迫られる事もなく、故に、経験も浅く、故に、苦手なままここまできてしまった技能。それは、「ぴいあある」。
8月の終わり、宅建協会伊東支部から突然の連絡が入った。
「不動産フェアーに、ガーデニングとして参加しないか。」とのこと。
常々お世話になっている業者さんたちの間に挟まり、感謝の気持ちを掲げながら、「ぴいあある」するのも良いではないか。フェアーの宣伝チラシと新聞広告にも名前が載る。当日は花の苗に社名を入れて配れば、絶好の「ぴいあある」になる。植木屋としては一社だけの参加。ETC・・
ピコピコと脳内電卓をたたきながら、5分程度の超高速思考で、
「よろしくお願いします。」となった。
結局、「庭・ガーデニング相談コーナー」として、ブースを持つことになってしまった。しかも親方は現場があるので、当日は私一人で立つことに・・。準備の時間があまりない。あわてないで急げ!
年老いたパソコン一台を駆使して、チラシを作る。お肌もピンピンで世の中がバラ色だった頃、コピーライター志望だった。今は違う。でも、「お庭作り・リフォーム・メンテナンスは石田造園におまかせください」からスタートし、今の能力の限界でなんとか作り上げた。力になってくれたのは、「筆王」さん。(力士ではない。手紙用のソフト。)
並行して、あいた時間に現場の写真をとりまくる。しかしあいた時間は夕暮れだったり、曇っていたり、手入れ前の無残な姿だったり、思うようには行かない。時間ばかりが過ぎていく。それでも何枚かピックアップしプリントアウトし、説明をつける。
配る苗は時期的に困ってしまった。花の苗は、花が付いてないと見栄えが悪く、終わりかけの花でも都合が悪い。知り合いにお願いしたら、「ニチニチソウ」を勧められてた。断りにくく、お願いした事を後悔した。でも、丁重に「ごめんなさい。」と言う。知り合いではなく少し遠くへ跳びこみで買い付けに行った。気が楽だった。「アキランサス」を3色と「カンパニュラ」の一年草を何色か選んだ。ポットに貼り付ける社名と電話番号の小さなカードを「筆王」さんの名刺用で作り、ほぼ準備は整った。
フェアー前日、私の扁桃腺が腫れた。熱が出て体中が痛くなった。「相談コーナー」が「ムジンくん」になっちゃう。大人に成長してくれない扁桃腺を恨みながら、近くの耳鼻咽頭科で点滴を受け、薬をもらい、涙を拭いて気合を入れ直した。大抵の菌は私の気合に負けるのだ。今回も勝利。
初日は平日ということで、お客様の出足も悪く、あちらこちらのブースでトホンとした営業マンが焦点の合わない目で立っていた。○○ハウスや○○ホームといった立派なノボリやポスターや模型ハウスを展示したブースの中、寄せ植えのハチに飾られた我が社は中学校の文化祭のような展示で少々恥ずかしかったが、不動産屋のおじちゃんおにいちゃんたちは、「そんなこたあないよ」と励ましてくれた。東京電力の電気調理器具コーナーでは揚げたてチキンやアツアツおでんと、でんこちゃんキーホルダーを頂き、内輪で盛り上がる。
2日目は開場と同時にポツポツとお客様が来場し、笑顔が忙しい。来場者の目的が「土地建物」だから、相談というよりは世間話のようなコーナーになり、内心ほっとした。配る苗の中に込めた呪い、じゃなかった、祈りのチラシがいつかジワッと発火することを信じて、ひたすら笑顔の応対。そして、無事に幕を閉じた。
改めて今までと同じやり方ではダメだと、痛感した。不得手であっても経験不足であっても、時に、手拭いを巻いた営業職人にもならなくては生きて行けない。営業マンを雇い入れるのではなく、職人が職人を売り込まなくては意味がない。一人で二役くらい手拭いの柄を変えればできるのだ。大手の造園会社のように立派な「ぴいあある」はできずともコツコツ自分のペースでやっていこう。
追記・宅建協会伊東支部の皆様、大変お世話になりました。今後共宜しくお願いいたします。